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AIが「確認済み」としたExcel、本当に正しい?介護データ12か月分で検証した

厚生労働省・e-Statが公開する介護給付費のCSVを、12ファイル・504データ行まとめてCodexに渡しました。指示は265文字。AIは約21分でExcelを作り、途中の人間介入は0分でした。AI自身の確認結果は「不一致0件」。ところが別の方法で調べると、正しい集計値は多く確認できた一方、完成Excel全体の正しさまでは証明できませんでした。今回の結果は、完全成功ではなく「mixed(一部成功)」です。

先に結果

項目結果
入力12ファイル・504データ行・6,048個の数値
AIへの指示265文字
最初のExcelを固定するまで21分18.5秒
処理中の人間介入0.0分
AI自身の確認6,048個を確認し、不一致0件
独立検査と総合判定全体の完全性は判定不能・mixed(一部成功)

今回新たに支払った外部費用は0円です。ただし、以前から契約しているCodexの利用料は含みません。

ここで重要なのは、「判定不能」を「AIの間違い」に数えていないことです。今回分かったのは、AIの確認だけでは完成品の正しさを証明できなかった、ということです。

使ったのは公表済みの介護統計

使用したのは「介護給付費等実態統計」の2025年1〜12月審査分、月報第2表です。毎月42データ行あり、介護サービス別の受給者数と費用額が要介護度ごとに並んでいます。12か月で504データ行、数値は6,048個です。

これは実際の施設の業務データや利用者個票ではなく、公表済みの集計表です。氏名、住所、利用者番号などの個人情報は含まれていません。また、「審査分」の月は、介護サービスを提供した月と同じとは限りません。

AIへ実際に送った265文字

詳しい仕様書や完成見本は渡さず、次の指示だけを送りました。

inputフォルダにある12か月分の介護給付費CSVを、月別・サービス別に確認しやすい1つのExcelにまとめてください。受給者数と費用額を区別し、サービスの階層や要介護度が分かる形にしてください。元データの値は勝手に直したり補ったりせず、気になる点は別に示してください。各データが元のどのファイルの何行目か追えるようにし、月別・サービス別の集計も作ってください。完成後、欠落・重複・集計ミスがないか自分で確認し、確認結果をExcel内に残して、outputフォルダに保存してください。不明な点は推測せず、要確認としてください。

作業にはCodexのgpt-5.6-sol(推論設定high)を使いました。作業担当のAIから直接読めない場所に正解データと検査方法を分け、入力CSV、指示、保存先だけで作業させました。新しい会話で1回だけ実行し、質問への回答、追加指示、修正、再実行はありませんでした。

AIは9シートのExcelを作った

完成したExcelには、月別集計、サービス別集計、504データ行をまとめた表、元ファイルと元行を追うための情報、注意事項、AI自身の確認結果など、9つのシートがありました。検査ツールで正常に読み込め、数式エラーは0件でした。

AI自身の確認表には、12ファイル、504データ行、6,048個の数値を確認し、「不一致0件」と記録されていました。ここまでを見ると、問題なく完成したように見えます。

別の検査では、全体を確認しきれなかった

AI自身の「確認済み」だけではなく、作業前にルールを固定した別の検査で、元CSVと完成Excelを照合しました。

確認できた集計値は次のとおりです。

  • 月別集計:144項目中120項目が、競合のない状態で一致
  • サービス別集計:576項目中508項目が、競合のない状態で一致

残る月別24項目とサービス別68項目は、誤りと確定したわけではありません。完成Excel内の複数の表から同じ項目の候補が見つかり、どれを正式な値として比べるべきか自動判定できませんでした。

504データ行全体も判定不能でした。AIは元の行番号を示す列に、自然な日本語で「出典行」と名前を付けました。しかし、事前に固定した検査はその列名を認識できませんでした。そのため、行の欠落や重複、サービスの階層、受給者数と費用額を全件照合できなかったのです。

これは「AIが504行を間違えた」という結果ではありません。一方で、「504行すべて正しかった」と証明できた結果でもありません。AIの出力だけでなく、採点器側にも限界がありました。結果を見た後で検査ルールを変えることはせず、総合判定を一部成功のまま残しました。

0と0.0も判定不能

元CSVには、受給者数の「0.0」が240個、費用額の「0」が147個ありました。この統計では、どちらも丸めると表示の最小単位に届かない場合に使われるため、元表記を残す意味があります。

AIは元の文字を残す列を作りましたが、504データ行全体を照合できなかったため、すべてが正しい位置に残ったかは証明できませんでした。これも誤りではなく、判定不能です。

「人間0分」の範囲

0.0分だったのは、指示を送ってからExcelが完成するまでの途中介入です。AIからの質問、追加指示、修正依頼はありませんでした。AIの処理は約21分14秒、成果物を固定するまで約21分19秒です。

実験条件を考えた時間、データ準備、記事の確認、公開作業は含みません。プロジェクト全体の人間作業が0分だった、という意味ではなく、未計測の総人的作業時間は不明です。

短い指示と自動検証には交換条件がある

265文字の指示でも、Codexは途中の助けなしで、月別表、サービス別表、元データを追える列、注意事項、自己確認表まで作りました。短い指示で自由に作らせたからこそ、人が見れば意味の通る「出典行」という列名や、確認しやすい複数の表も生まれました。

しかし、その自由さが自動検証を難しくしました。人には同じ意味に見える列名でも、機械には別物です。親切に増やした表も、採点器には複数の答え候補に見えることがあります。

つまり、AIが「確認済み」と言うことと、人間側が「安心して使える」と独立確認できることは別でした。

実務でAIへ表整理を任せるなら、少なくとも次が必要です。

  • 元ファイルと元行を追えるようにする
  • AI自身の確認とは別に、数値を照合する
  • 繰り返す仕事では、列名と正式な出力表を先に決める

この1回からは一般化できない

これは公表済み集計表を使った1回の実験で、介護事務全般や実際の施設データをAIへ任せられると証明したものではありません。12ファイルの基本構造は同じで、数値欄の空欄、非公表記号、改訂値、重複行もありませんでした。

公開データなので、AIが学習中に似た表を見た可能性も排除できません。正解データを分けたのも同じパソコン内であり、未知の場所に別のコピーがないことまで証明した試験ではありません。別のCSVや別の実行でも同じ結果になるとは限りません。

実際の業務データをAIへ渡す場合は、組織の情報管理ルールや利用契約、最終確認の責任を別途確認する必要があります。

出典

この記事とExcelは、上記の公表CSVをCodexで加工して作成しました。

今回、AIは12ファイル・504データ行を途中介入0分でExcelにまとめ、自分では「不一致0件」と確認しました。しかし、独立検査では完成品全体の正しさを証明できませんでした。

AIに任せるなら、作らせる仕組みだけでなく、別に確認する仕組みも必要です。

この記事は全文無料です。有料部分や商品販売への誘導はありません。

次も、AIに実際の作業を任せて「どこまで放っておけるのか」を検証します。